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離婚裁判や離婚調停における判断基準について

 

 「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とは、婚姻関係が破たんして、回復の見込みがないことをいいます。

 

 ・・・分かりづらいかもしれません。
 5号については、「抽象的離婚原因」あるいは、離婚原因としての「一般条項」などと呼ばれています。文字通り、抽象的な規定ですので、分かりづらいのも無理がありません。

 

 立法者が法律を定める際、できるだけ離婚できる条件(法律的には「離婚原因」といいます)を明確に定めるため、1号から4号に類型化して、その条件を定めました。しかし、現実に起こる事すべてを立法時に予想して規定することはできませんし、あまりに硬直的になってしまうおそれもありますので、あえて、少し抽象的な規定を置いて、「1号から4号にはあたらないけれども離婚を認めるべき場合」に対応できるようにしてある、ということです。

 

 では、もう少し具体的に、どのようなケースがこれにあたるのでしょうか。

 

 「婚姻関係が破たんして」いる、というのは、

 

(ア)夫婦が婚姻継続の意思を喪失しており(主観的要素)

 

 かつ、

 

(イ)婚姻共同生活を回復する見込みがないこと(客観的要素)

 

をいいます。

 

 ただし、いずれも5号の判断にあたっては考慮される要素ではあるのですが、近年の裁判の傾向としましては、(イ)の客観的要素をより重視する傾向にあります。
 「婚姻を続ける気持ちがある」「いや、そんな気持ちはない」といった主観的要素についてあまり言い合ってもらちがあかない、という面もあるのかもしれません。

 

 客観的要素については、具体的には以下のようなケースが典型例となります。

 

@暴行・虐待・重大な侮辱(DV)
A不貞に類する行為(1号にあたらない程度のもの)
B浪費・勤労意欲の欠如(2号=「遺棄」にあたらない程度のもの)
C行き過ぎた宗教活動
D性的不能

 

 ご参考にしてみてください。

 

法律相談等で専門家の意見を参考にする場合について

 

 ただし、これらは、ご覧にならるとお分かりのとおり、人によって判断が分かれる内容を含んでいます。

 

 @のDVについては、離婚を認めるべき必要性がかなり高い類型であるといえますが、それでも、暴行はまだしも、虐待や重大な侮辱といったものは、価値判断によって結論が分かれることがあり得ます。

 

 ましてや、他のA〜Dの類型については、離婚したい側から見れば、当然「不貞に類する行為」である、「行き過ぎた宗教活動」である等々と思えますし、同じ内容について、離婚したくないが側から見れば、いずれも、多少不適切であったかもしれないが、それらにはあたらない、などとと考えるでしょう。

 

 結局のところ、裁判では、過去の類似の事件など参考にしながらも、@〜Dの有無だけではなく、他の様々な事情を考慮して判断することになりますので、一応、上記のような典型例にあたるかどうかは参考にできるにしても、やや、法律家でない素人の方が自力で結果を予測をするのが困難なものとなります。

 

 加えて、どうしても争いの渦中にある時には、裁判所が行うような中立的な立場での価値判断をすることは、どんな人にとっても極めて困難です。

 

 したがいまして、多少手前みそにはなりますが、弁護士を代理人に立てるかどうかは置いておくとしても、このような判断に迷われましたら、一度は法律相談をお受けになることをお勧めいたします。大抵は、相談料は書籍代程度ですみますので、時間と手間を考えても、コストパフォーマンスは悪くないと思います。

 

 ただし、法律相談を受ける際、法テラスの無料相談をお考えの方には、別の頁に法テラス元常勤弁護士としての経験を書いておりますので、ご参照いただければと思います。

 

その他の典型例について

 

 ところで、専門家を頼らず、自力でご判断される方にご参考にしていただきたい例として、上の@〜Dの典型例の他、

 

E性格の不一致
F配偶者の重い病気・障害
G実家との不仲

 

なども、よくご相談にあがる内容ですので、簡単に触れたいと思います。

 

 E〜Gにつきましても、他の事情との総合判断となることは同じですが、@〜Dと比べますと、やや、離婚が認められづらい傾向にあるようです。

 

 まず、E(性格の不一致)については、実務的には、それ単独で5号該当性が認められることはほとんどない、というところは大方の一致をみていると思います。
 性格が完全に一致しているご夫婦などあり得ないでしょうし、仮にかつては性格が完全に一致していたとしても、離婚が問題になっている以上、その時点では多かれ少なかれ性格の不一致はあることが通常でしょうから、これだけでは5号にあたらないということはある意味当然なのかもしれません。

 

 F(配偶者の重い病気・障害)については、高齢化社会の進行にともない、認知症の問題など深刻なケースも増えてまいりましたが、どうしても、主として人道上の見地からだと思われますが、余程、それまでに婚姻生活を続けるための十分な努力を積み、さらに、離婚後の相手方生活がある程度保障されている、といった事情がなければ、あまり認められること多くないと思われます。

 

 G(実家との不仲)については、古くからある「嫁・姑問題」が一つの典型ですが、これも、本来は、ご夫婦の問題と実家との問題はあまり関係がありませんので、何か、問題と問題の間をつなぐような事情がなければ、やはり、これ単独で認められることは非常にまれであるように思います。

 

 ただ、これまで見てきたとおり、これらの事情一つだけでは離婚は認められないことが多いわけですが、いくつか重なることで、少しずつ離婚が認められやすくなる傾向がありますので、ご自身の問題をお考えになる際には、色々な角度から問題点を整理されることをお勧めいたします。

 

別居の有無と別居期間について

 

 最後に、5号(その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき)を考えるうえで、どうしても外せない重要な事情があります。

 

 ご存知の方も多いかと思いますが、別居の有無とその期間です。

 

 ご夫婦には同居義務がありますので、一方的に別居を始めることは契約違反として、慰謝料等の損害賠償義務が発生する場合があります。

 

 しかし、分かりにくいところなのですが、例え義務違反であっても、別居をしているのかいないのか、しているならそれが長期にわたるものなのかどうなのか、ということは、5号にあたるか否か、すなわち離婚が認められるか否かに非常に大きな影響を与えます

 

 どの程度大きな影響をあたえるかといいますと、早晩改正が予定されている民法では、離婚について、5年間を越える別居期間あるケースについては、基本的に離婚を認めることを明文化する方向で検討が進んでいることが参考になります。

 

 まだ出来上がってもいない改正後の法律など関係がないと思われるかもしれませんが、民法のようにほとんどの方の日常生活に密接する重要な法律については、特に慎重に、それまでの裁判例の傾向などを十分考慮しながら、あまり極端な変更にならないよう注意して立法がなされます。そのため、5年間の別居、という基準も、急に出てきた話ではなく、現在の裁判例の積み重ねの結果、だんだんと落としどころが見えてきた結果として、明文化がなされようとしているということですので、現在においても、とても参考になるものなのです。

 

 現在の裁判例では、さすがにまだ明文化されたわけではありませんので、機械的に5年を超える別居期間があれば離婚を認める、それ以下だと一切認めない、というほどくっきりとは別れてはいません。しかし、5年を境に、離婚が認められることはかなり増える傾向にあるとはいえますので、他の考慮要素とともに、あるいは、他の考慮要素は置いておいてでも、まずは別居についてお考えいただければ、結論の方向性が見えてきやすいのではないでしょうか。

 

 ぜひ、ご参考にしてみてください。

 

 なお、「5年までは別居期間はないが何とかならないか」あるいは、「5年以上別居しているが離婚を止められないか」という方がもしあれば、どうして法律関係は複雑になりますので、やはり一度は、専門家にご相談いただければと思います。

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